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びっくり電話 |
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今日と明日が昨日と今日に変わる頃、俺は携帯電話を片手にベッドの上にいた。 そしてベッド脇に置いてある時計を眺めながら、カウントダウンの時間まで待つ。 左手に握った携帯電話の画面は少し前からずっと同じで、早く時間にならないかと気持ちが焦る。 あと1分というところで、親指を通話ボタンの上に移動させる。 あと30秒というところで、改めて座りなおす。 そして10秒をきる頃、心の中でカウントをとる。 10,9,8,7,6,5,4,3,2,1。 ゼロと同時に、俺はボタンを押した。 1コール、2コール、3コール、4コール…。 鳴り響く相手を呼び出すコールに胸が踊る。 そしてついに繋がった。 『神尾か、どうした?』 意外そうな跡部の声に俺は元気よく言葉をかける。 「跡部、誕生日おめでとう!」 『あぁ…』 「なぁなぁ、一番だろ?一番」 その為にずっとベッドの上で待機していたんだから、一番に決まっている。 それでも跡部からその言葉が聞きたくて、ついついせかしてしまう。 『何がだ?』 「跡部におめでとうって言ったの、俺が一番だろ?」 なんたって12時ジャストに電話したんだからな。 他の奴と電話してて繋がらないなんてミスもなかった。 それなのに跡部は俺の期待を裏切る言葉を返してきた。 『少なくとも一番じゃないな』 「嘘だろ。そんなはずないって」 跡部の事だから、俺をからかっているのだろうと言葉を返すが、電話越しに跡部がため息をついたのがわかった。 『お前、時計見たか?』 「見たぜ。今ピッタリ12時だろ?」 『はぁ?お前の目は飾りか?今は12時5分だぞ』 「えぇ!?」 そう言われて目の前の時計を見るが、12時1分弱。 どう考えても俺が一番のはずだ。 じっと目覚まし時計と睨めっこをしていた時、俺は自分のミスに気づいてしまった。 「あっ…」 『マヌケな声を出して、どうした?』 「5分遅れてるの忘れてた…」 いつからだったか時間が5分間遅れていたのだった。 人との待ち合わせの際、遅れずに済むからと今まで直していなかったのか逆に仇となったようだ。 よりにもよってこんな時に忘れるなんて最悪だ。 『お前バカか?普通携帯開けた時に気付くだろ』 「いや、だからよぅ。違う画面だったから…」 まさか15分も前から、跡部に電話掛ける為に電話帳開いてたなんて、口が裂けても絶対言えねぇ。 言ったら最後バカにされるのは目に見えている。 勿論、言わなくても結果は一緒だと思うけど。 『バーカ。本当にガキだな』 「仕方ないだろ…」 予想通りの言葉が更に追い討ちをかける。 それでも一番始めに言いたかったんだから仕方がない。 『そう言えばお前、俺におめでとうって言わないんじゃなかったのか?』 「えっ?なんの事だよ」 『お前、自分の言った言葉を忘れたのか?』 跡部のその言葉で自分の誕生日、跡部にいった言葉を思い出した。 そうだよ俺、自分の誕生日にからかわれたから、おめでとうなんて言わないって宣言してたんだっけ…。すっかり忘れてたぜ。 『まぁ、お前の事だから忘れてたとか言うんだろ?』 あぁ図星だよ。 悪かったな、記憶力悪くて。 「あぁ、そうだよ!どうせ俺は物覚えが悪いよ!」 『まぁ大分前から分かってたけどな。まさか、今日の約束は忘れてねぇだろうな?』 今日の約束って、あれだろ? この間会った時、帰り際に無理矢理約束させられたやつ。 「10時に駅で待ち合わせだろ?」 『あぁ、遅れるなよ』 「わかってるよ。じゃあ、またな」 自分でミスを犯した悔しさから、さっさと電話を切ろうとした。 いつまでもそれをネタにからかわれるのは嫌だからだ。 しかし俺の気持ちとは裏腹に跡部が言葉を繋いだ。 『そうだ、神尾』 「なんだよ」 『サンキュウな』 突然言われた言葉に俺の思考力は追いつかない。 跡部が言っている言葉の意味も、なぜこのタイミングでその言葉が出てきたのかも。だからこそ、思わず聞き返してしまった。 「えっ、何が?」 『なんでもねぇよ』 「なんだよ、それ!お前が言ったんだろ」 『忘れろって言ってんだよ!』 「誤魔化すなよ。気になるだろう!」 いくらこっちが電話を切ろうとしていたとは言え、意味がわからない言葉を言われ簡単に引き下がれるほど俺は物分りがいい方ではない。 それは跡部も同じで攻防を繰り広げるか、ついに跡部が折れた。 『だからつまりだな、電話くれてありがとうって言ったんだ』 「えっ?跡部…」 『じゃあ明日は遅れるなよ。じゃあな』 「あっ、うん。おやすみ」 跡部との通話を切っても、俺は余韻に浸っていた。 最後のそっけない態度は多分照れ隠しだろう。 だからあの跡部が素直に御礼を言ってくれた事が嬉しかった。 なにせあの跡部だからな。 その事実が嬉しくて、俺はその後しばらく寝付けずにいた。 まどろむ意識の中、繰り返し流れるメロディー。 目覚まし時計の音とは違う、聞きなれた音。 それが跡部の指定音だと気付くまで、しばし時間がかかってしまった。 手を伸ばして携帯電話をとると、眠い目をこすりつつ携帯電話を耳元に当てる。 「おはよう、跡部」 『神尾、お前いい度胸してるな』 「えっ、なにがだよ」 明らかに不機嫌な声。 それだけで何かずしんと嫌な感じがした。 『お前、今まで寝てただろ?』 「うん。どうしてわかったんだよ」 『今の時間、言って見ろ』 跡部に促され、ベッド脇の目覚まし時計に視線を移す。 そう言えば電話で起こされたから、今が何時か知らなかったんだよな。 「えーっと、10時…21分?あっ、26分か。それが?」 『お前、夜中に電話で話した事覚えてるか?』 「電話って・・・。えっ、10時26分!?」 自分が今さっき発した言葉に耳を疑う。 俺は今日、跡部と10時に待ち合わせしてたんだ。 『やっと思い出したか…』 「ごめん、跡部!どうしよう…」 今から急いで用意しても、10時40分位になるよな。 既に20分も待たせてるのに、そこから更に15分か。 なんていうか全てにおいてギリギリだよな。 『俺様は心優しいから、あと少しだけ待っててやる。いいか、あと5分で来い!』 「いや、待てよ。どんなにリズムをあげたって10分はかかるって!」 『そんな事知るか!5分だ、いいな』 「分かった。頑張るから、帰るなよ」 そう言って通話を切ると、俺は急いでベッドから抜け出す。 やっぱり誕生日迎えてもあいつはあいつだな。 そう思いつつも、急いで準備をする俺も俺だけどさ。 俺って、本当に健気だと思う。 まぁ、また年が離れた訳だし仕方ないか。 |
END |