ミゲル×ラスティのお題

1.アカプルコ【ミゲル視点】
「何食ってんだ?」
やたらと目立つオレンジの髪を発見し、近づいてみるとラスティは何かを食べている最中だった。
「よっ、ミゲル。任務終わったの?」
「あぁ。まぁな」
そう答え、俺はラスティの脇に腰を下ろした。
ラスティの目の前には食べかけのケーキと紅茶が入ったティーカップがあった。
「これ、アカプルコって言うケーキなんだ。食べる?」
俺の返事を聞く前にラスティは、一口フォークでケーキ俺の前に運んでいた。
それをぱくっと口に入れれば、オレンジのさわやかな酸味と甘味が口いっぱいに広がった。
「美味いな、これ」
「だろ?あんまり甘いの好きじゃないけど、これは好きなんだ」
そう言って再び自分の口にケーキを運ぶ。
そして何か思い出したように再び口を開いた。
「アカプルコって、地上にある都市の名前なんだって。ミゲル知ってた?」
「いーや。知らなかったが」
「海が綺麗なところなんだって」
俺達は人工的に作られたプラントに住んでいる所為で、海なんて物とは無縁の生活を送っている。
それなのに、この脇にいるラスティは海に憧れを抱いている。
「いつか、2人で行けるといいね」
そう言うラスティに、俺は"そうだな"と言ってやる事が出来なかった。
それがとても難しい事を俺は知っていたから。
2.意地悪【ラスティ視点】
金糸のように輝く、さらさらとした髪。
閉じられたまぶたの下には琥珀色の瞳が隠れている。
コーディネーターで容姿端麗はわかるけど、なんかミゲルのはずるい気がする。
だから俺は、あまりに綺麗な寝顔にマジックペンで落書きをしたくなった。
きっとそれをやったら、ミゲルは酷く怒るだろう。
そんなのは十分わかっている。
でもこれくらいのイタズラは可愛いものだろう。
なぜなら、いつも俺はミゲルに意地悪をされているのだから。
だからコレは小さな意地悪。
たまには、そんなのもいいっしょ?
3.ラッキーカラー【ラスティ視点/ミゲル←ラスティ】
「ミゲルのジンって、何でオレンジ色に塗装してあんの?」
それはミゲルのジンを見た時から、ずっと思っていた事だった。
漆黒の闇に包まれた宇宙でも映えるオレンジ色のジン。
ミゲルの異名である"黄昏の魔弾"が、ここからきている事はすぐに理解した。
だが"なぜ"オレンジ色なのか、今まで聞く機会を逃していた。
俺の素朴な質問にミゲルは"あぁ、お前は知らないのか"と1人納得したように頷いている。
「オレンジは俺のラッキーカラーなんだ」
「ミゲルって、そんなの気にするタイプだっけ?」
俺はてっきり、そう言うのは信じないタイプだと思っていた。
俺から見たミゲルは、占いは良いのは信じて、悪いのは聞かなかった事にするタイプだと思っていたからだ。
「まぁ、願掛けみたいなものだな。結構、多いんだぞ。願掛けしてるやつって」
そう付け加えたミゲルに、俺はふと思った事を口にした。
「じゃあ俺が自分の機体を持てる様になったら、金色に塗ってもらおうかな。ピッカピカに光るやつ」
こっちは真面目に言っていると言うのに、俺の言葉を聞いたミゲルは"マジで?"って顔をしている。
「お前って、成金趣味?」
「違うって。でもいいっしょ、金色」
そう言って軽くミゲルの髪に触れた。

ミゲルのラッキーカラーが俺の髪と同じオレンジ色なら、俺はミゲルの髪色と同じ金色がラッキーカラーだろ?なんて事は口が裂けても言えないけど、いつかこの気持ちを伝えられますように。
それは今日決めた、俺のラッキーカラーへの願掛け。
4.はねる髪の毛【ミゲル視点】
歩くたびに揺れる目の前のオレンジ頭。
元々癖のある髪が、ピョコピョコとはねるように揺れる。
この目立つ髪色の所為か、それが妙に目に付く。というか、ぶっちゃけて言うと目障りだ。
確かにオレンジは俺のラッキーカラーではあるが、ラスティはラッキーパーソンでは無いと、俺はこいつの日頃の態度から結論付けていた。
ちょっとした事でギャーギャーと騒ぎ、年下の癖に生意気な口を叩く。
それでいてなぜか無視できない存在。
そんなラスティの髪を、俺は無意識のうちにぐいっと引っ張っていた。
突然後ろから髪を引っ張られた為に、自然とラスティの歩みは止まり、俺の手をはらうと俺の事を睨みつけてきた。
「なんすんだよ、ミゲル」
「いや、お前の髪って妙に引っ張りたくなるんだよな」
素直にそう言えば、ラスティはむっとしたように頬を膨らませた。
「悪かったね、癖の強い髪で。どうせ俺の髪は、ミゲルみたいにさらさらじゃねぇよ!」
そう言うとドスドスとうるさい足音を立てて、ラスティは再び歩き出した。
俺はそんなラスティの態度に軽く口元を緩めると、ゆっくりとした歩みでラスティに続いた。
5.先輩と後輩【ミゲル視点/ミゲル→ラスティ】
「はぁ~」
ここ数日、俺はため息が耐えない日々を過ごしていた。
その理由はわかっているのだが、俺1人ではどうする事も出来なかった。
「何、ため息なんてついてるんですか?先輩」
少しからかっている風な口調で声を掛けてきたのは、俺の2期下のラスティだった。
俺の脇にどかっと座りこむと、俺の顔を覗き込んできた。
「深刻そうな顔してるけど、もしかして恋煩いとか?」
「まぁーな。そんな所だ」
冗談のつもりだったのだろう。
ラスティは自分の予想が当たったのが、さも意外だったように目を丸くした。
そして少し真面目な面で、俺に再び問いかけてきた。
「もしかしてミゲルって恋愛経験少ない、なんて言わないよね?」
その言葉に否定、つまり俺は恋愛経験が多いという意味が含まれている事を俺は理解した。
だから俺はいつもと同じトーンで返した。
「まぁ、そんなに多くは無いな」
基本的に好きになった子を長く思い続ける所為だろう。
そう答えると、ラスティは先ほど同様にびっくりした表情をしている。
「なんか意外。ミゲルって、遊んでるイメージがあったんだけどな」
人をなんだと思っているんだこいつは。
そう言い返してやろうと思ったのに、俺より先にラスティの奴が口を開いた。
「それなら俺が相談に乗ってやろうか?俺の方が恋に関しては先輩だろうし」
にやにやと笑いつつ言うあたり、確実に楽しんでいやがる。
俺の反応を…。
「お前なんかに恋愛相談を乗ってもらうほど、俺は落ちぶれてないですよ」
"ちぇっ"と言うラスティを追い払い、俺は席を立った。

あのバカ。
好きな奴に恋愛相談が出来るかって言うの。
モドル