【ミゲラス好キーに7のお題】 配布元:ミゲラス好キーに7のお題

太陽【ミゲル視点 ミゲル→ラスティ 片思いのミゲル】
「はい、あげる」
そう言って、久しぶりに会ったラスティから、黄色い花を貰った。
「なんだ、これ」
「ミニひまわり」
「それ位、見ればわかるって。だから何で、ひまわりの花なんだよ」
「お土産」
今日までの4日間、ラスティは実家に戻っていた。
久しぶりの帰省に、お菓子や本などを買ってきたのだろう。
だから、お土産の意味も分かる。
「それで、なんで花なんだ?」
「ミゲルっぽかったから」
髪の色と一緒だろ?と言って、俺の髪に触れる。
「部屋にでも飾ってよ」
そう言って、ラスティは俺に一輪、ひまわりの花を手渡した。


そんな訳で、俺の部屋には一輪の花が飾られた。
花瓶なんて持っている訳も無く、花を挿してるのは貰ってきた瓶。
薄いブルーのワインボトルに太陽のようなミニヒマワリ。
殺風景な部屋に、それがよく映えた。
「あいつ、意味分かってんのかねぇ~」
どうして男の俺が知ってるかと言えば、それも謎だが、ひまわりの花言葉は『私はあなただけを見つめる』だ。はっきり言って愛の告白じゃあるまいし、普通贈らないだろ。それも男の俺にさ。
しかも性質が悪い事に、俺はラスティが好きな訳だ。
だけどラスティはそんな事を意識してる訳も無く、この状態って…。
「蛇の生殺しかよ…」
ため息と共に俺の状況を示す言葉が漏れた。
始めは自分のこの気持ちに戸惑いはしたものの、今は胸を張ってあいつの事が好きだといえる。
だから俺のこの気持ちを打ち明けもいいわけだけど、多分、いや絶対にあいつから色好い返事なんて返ってくる訳ないしな。
そんな事を考えてしまう自分自身が、乙女みたいだと思った。
うわっ、自分で言ってて、さむっ!!

「何、1人で百面相してんの?」
「うわっ!ラスティ!!」
突如出てきたラスティに驚き、危うくベッドから滑り落ちるそうになる。
しかし、コーディネーターの俊敏さで、ぎりぎりの所で体制を立て直した。
「大丈夫?ミゲル?」
「あぁ、なんとかな…」
そう答えると、ラスティは俺とは反対側のベッドに腰を下ろす。
「飾ってくれたんだ」
デスクの上に置いてあるヒマワリを見て、ラスティが嬉しそうに言う。
「お前が飾れって言ったんだろ」
「本当に飾ってくれるとは、思ってなかったからさ」
それは俺が、貰った花を飾らずに捨てるような男だと言いたいのか?
しかも好きな奴に、貰った物を…。
俺の心の声が届くわけも無く、ラスティは更に言葉を続ける。
「綺麗な色の瓶だね。ワインボトル?」
「あぁ、花瓶なんて持ってないからな。貰ってきた」
ふ~んと言って、ラスティは、しばらくひまわりの見ていた。
「なんか、空みたいだね」
「空?」
「そう。ひまわりが太陽で、瓶が空。そう考えると、もっと綺麗だろ?」
そう言われてみると、分からなくも無い。
「やっぱり、ひまわりにしてよかった」
「えっ?」
「ミゲルには、ひまわりの花がよく似合う」
そう言って、にこっと笑うラスティ。
その笑顔に、俺がドキっとした事は言うまでも無い。

ラスティ。お前、分かってないよ。
お前の方が似合ってるぞ?ひまわり…。
太陽みたいなラスティ。それは俺だけの太陽。

すききらい【第三者視点/ミゲル+ラスティ/まだ曖昧な二人】
「あぁー、腹減った」
昼食の乗ったトレイを持ちながら、ミゲル・アイマンは呟いた。
訓練の為、大幅に昼食の時間がずれてしまったのだ。
よって、現在の時刻13時32分。
「空いてる席は…」
ぐるりと部屋を見渡すと、赤の制服にオレンジ頭の少年が目に入った。

「前に座ってもいいか?」
ミゲルの声に、目の前の少年が顔を上げる。
「なんだ、ミゲルか…」
「なんだはないだろ、なんだは…」
"傷つくぞ"と言いつつも、大して気にしているようには見えない。
ミゲルはラスティの答えを待たず、どかっとラスティの前に座った。
もちろん、ラスティが拒否することは無いと分かっていての行動だ。
「お前も訓練で遅れたのか?」
「あぁ、ちょっと作業に没頭しててね」
「ふ~ん」
ミゲルは、さほど興味がなさそうに頷く。
そしてお腹が減っていたので、食事に手を付ける事にした。
ちらっと、ラスティの方を見ると、大して減っていない。
彼もついさっき、ここに来たらしい。
「そう言えばラスティって、にんじん好きなのか?」
思い出したように、ミゲルが口を開く。
それはミゲルが、少し前から気になっていた事だった。
料理ににんじんが入っていると、ラスティはまず一番に、にんじんに手をつける。
それも嫌々口にすると言うより、たんたんと食べるのだ。
だからミゲルは、ラスティがにんじん好きなのではないかと、思っていた。
「キライだよ」
「えっ?」
「だから、にんんじんなんてキライだって、言ってんだよ」
そう言って、小さくため息を吐くラスティ。
「なら、何でわざわざ食うんだよ。残せばいいだろ」
そんなラスティを見て、自然とそんな言葉が出てきた。
嫌いだから残す。
まるで子供のような発言をするミゲル。
しかし本当に嫌いなら、食べなければいい。
ここでは別に残したからと言って、親が注意するような者はいない。
だから、大抵の者は嫌いな物が出たら残している。
「キライだからって、いつも避けてたら、ずっと食べれないままだろ。こうやって、食べ続けてれば、いつか慣れるかもしれないじゃん。だから俺は食べるの」
分かった?という様にラスティは、にんじんのグラッセを口に運ぶ。
「へぇ~、結構大人な考え持ってんだな。ラスティも…」
「結構は余計だよ」
そう言って、ラスティは食事を続けた。
だが突如、何か思いついたようにラスティは顔を上げた。
「ミゲル、プリンキライだろ?俺が食べてやるよ」
と言って、ミゲルのプリンに手を伸ばすラスティ。
「なっ。俺のプリンを取るなよ!」
取られそうになるプリンを守るミゲル。
そして小さな子どもの様に、プリンを取り合う2人。
結局、2人とも子どもなのである。

にんじんはキライ。プリンはスキ。
じゃあ、ミゲルはどうだろう。
すき?それともきらい?

black【ミゲル視点/ミゲル×ラスティ前提/バカップル
「なぁ、ミゲル。ブラックホールって、どの辺りにあるか知ってる?」
「何言ってんの、お前…」
「だから、ブラックホールがある場所を聞いてんの。ブラックホール位、知ってるだろ?」

【ブラックホール】
恒星が、進化の最終段階で限りなくくずれ落ち、中心部が光を吸収するほどの超高密度になった天体
国語大辞典(新装版)ゥ小学館 1988より引用

宇宙に住んでいて、そんな事を知らないほど、俺は非常識人間では無い。っうか、そんなんでZAFTにいれる訳が無いだろう!
思わず心の中で突っ込みをいれる。
ラスティの突然はいつもの事だが、こう意味不明な事ばかり言われると俺の体が持たないって。
「そりゃ、ブラックホールが何かくらいは知ってるに決まってるだろう。だけどな、ブラックホールがどこにあるかなんて事、いくら俺だって知ってる訳ないだろ」
俺の言葉に、ラスティは"ちぇ~、使えないミゲル~"なんて抜かしてやがる。
「お前なぁ…。大体、場所知ってどうすんの?お前」
「吸い込まれに行く」
「はぁ!?」
「あっ、ミゲルも道連れだから。拒否権ないし」
突然、ブラックホールはどこにあるかとか、吸い込まれに行くとか、俺も道ずれだと言い出すラスティに、はっきり言って、頭が痛い。
コーディネーターである俺を、頭痛に追い込ませるとは、凄い事だぞ?
って、俺も少し論点がずれてるな。
「何?お前、頭でもぶつけた?」
「別に頭はぶつけてないし、俺はいたって真面目だけど」
尚更、性質が悪い。
「だってさ、ブラックホールの中は、何も無いんだろ?」
首を傾げて聞いてくるラスティに、俺も首を傾げる。
「光を吸収するって事は、他の物も吸収される訳じゃん。そんな中に、俺とミゲルだけって、なんかドキドキしない?」
ちょっと上目遣いに見てくるラスティ。
俺としては、お前のその仕草にドキドキしてるんだけどな…。
「だから、ブラックホールを探したいのか?」
「そう言うこと」
首を縦に振るラスティに、俺は小さく笑った。
「お前って、結構乙女なんだな」
「っ!!うるさいっ!!」
首まで真っ赤にして言うラスティを見て、俺は柄にも無いことを思ってしまった。
ラスティと一緒なら、ブラックホールに吸い込まれるのも、いいのではないかと。

はぁ~、俺も変わったなぁ。
けどさ…。
好きな奴と二人っきりなら、黒の世界に染まるのも、悪い事じゃないだろ?

ケーキ【ラスティ視点/ミゲル×ラスティ前提/バカップル】
シュミレーション訓練を終え、部屋に戻ろうとした時、ニコルに声を掛けられた。
「どうかした?ニコル」
「ラスティは確か、甘い物が好きでしたよね?」
「あぁ、好きだけど」
甘い物は良い。疲れも取れるし、脳にも良い。何より、美味しい。
この間のプリンも、美味しかった。残念ながら、ミゲルのプリンは取り損ねたけど…。
「よかった~。実は母から、ケーキが送られてきたんですよ。だけど僕一人じゃ食べられないんで、よかったらラスティも食べてくれませんか?」
「俺が食べてもいいわけ?」
「えぇ。じゃあちょっと、僕の部屋に寄ってください」
「おう!」

そう言って、るんるん気分でニコルの部屋に行ったのが、今から10分前の事。
今、俺の前にはニコルから貰ってきたケーキが置いてある。
「はぁ~」
そのケーキを見ながら、ため息一つ。
あぁ、ため息をつくと、幸せが逃げていくんだっけ?
まぁ、いっか。
それにしてもどうしようかなぁー、このケーキ。
ニコルから貰ったケーキ。本来なら、とっくに食べてるところだけど、今回だけはそれが無理だった。だって、だって…。

チョコレートケーキは、キライなんだよ…。

いると言った手前、断るわけにもいかずに貰ってきたけど、食べれないんだよな…。
食べ物を粗末にしたくないし、どうするかな。

ケーキを眺めていると、突然、ドアが開いた。
「邪魔するぞ。アスランいるか?」
ドアに目をやると、ミゲルが立っていた。
「アスランなら、いないよ。ニコルと出掛けてる。どうしたの?」
「いや、部屋のドアの調子が悪いから、ちょっと見てもらおうと思ってな」
機械弄りが好きなアスランは、よくこういった修理を頼まれる。上に頼むより早いし、気兼ねをしなくて済むからだ。
「そっか。じゃあ帰ってきたら伝えようか?」
「あぁ、頼む。で、お前は何やってんの?」
そう言って、机の上にあるケーキに視線を向ける。
「あぁ、ニコルにケーキ貰ったんだけど、ちょっとね…」
「食べないのか?好きだろ?甘いもの」
「うん…。好きなんだけど、チョコレートケーキだけは、ちょっと苦手なんだよね…」

甘いものは好きなんだけど、このチョコレートケーキだけは受け付けないんだよね。たぶん、甘すぎるのかな…。

「へぇ~。で、これどうするんだ?」
「どうしよう…」
貰ったものだから、食べないと失礼にあたるけど、食べれないじゃ仕方ないじゃん…。
そう思いつつ、ケーキとミゲルを見比べる。
「あっ、そうだ!ミゲルが食べてよ。食べれるだろ?甘いもの」
「まぁ、食べれるけど…。じゃあ、俺が出す条件のめよ?」
「何?条件って…」
そう言うと、俺の手にフォークとケーキの乗った皿を持たせた。
「お前が、俺に食べさせろ」
「はぁっ!?」
「だから、お前が俺に食べさせてるんなら、食べてやるって言ってんだよ」

…。なんか、究極の選択かも…。
だってさ「はい、あ~ん」なんて、どっかのバカップルじゃん!!

「で、どうする?」
ミゲルはニヤニヤと嬉しそうに、聞いてくるし…。最悪、超悪趣味、変態。
「わかったよ。やればいいんだろ」
もう自棄だ!耐えろ、俺!!
そう言って俺自身を奮い立たせ、フォークでケーキを一口分に切る。
「ほら、口開けて」
そう言うと、ミゲルは満足そうに笑いながら、口を開けた。
そして俺は震える手で、ケーキをミゲルの口に運ぼうとした。

シュン

再び、ドアが開いた。
「おい、ラスティいるか?」
「「えっ?」」
今まさに、ミゲルにケーキを食べさせようとしていた時、イザークが入ってきたから、思わず俺達は動きを止めた。
よりによって、ミゲルにケーキを食べさせようとしてる場面なんて、間が悪すぎる。
アスランやニコルならまだしも、その相手がイザークだなんて、俺にどうしろと言うんだよ。
「その、イザーク。勘違いするなよ?これは…」
「俺は何も見てはいない。邪魔したな」
そう言うイザークの目が、凄く冷たかった。
あぁ、本気で呆れたって、顔してるよ。
「ちょっ、待っ…」
無常にも、ドアが閉まる。
ディアッカと違って、皆に言いふらしはしないと思うけど、かなり気まずいかも。
「ミゲルのバカ!!イザークに誤解されただろ!」
振り返ってミゲルに文句を言うと、ミゲルは凄く不機嫌な顔をした。
「俺の所為かよ!」
「決まってるじゃん。言い出したのミゲルだろ!!」
「お前だって、ノリノリだったじゃんかよ」
「あれは仕方なくだろ!」

結局、この口論は、アスランが戻ってくるまで続いた。


もう絶対、ミゲルとはケーキ食べない。
大好きなケーキが、ちょっと恨めしく思える瞬間だった。
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